日本植物病理学会ニュース 第3号 (1996年02月)

平成7年6月〜平成7年11月の学会活動状況
1.地域部会開催報告
北海道部会:
 平成7年度の北海道部会は例年より早めて10月30日(月)と31日(火)の両日に, 札幌市の北方圏センター会議室で開催された. 参加者は例年とほぼ同じ約100名であった. 30日には午後からシンポジウム形式の談話会を行い, 「畑作物の病害」というテーマで, テンサイおよびアズキの病害と根圏微生物について5名の方に講演をお願いし, 基礎研究から生産現場の課題まで広く活発な論議がなされた. 当部会では発足当時から談話会が開催されているが, 通算161回となった. 夕刻には約70名の参加を得て懇親会が開かれ, なごやかな歓談が8時まで続いて終了した.
 翌日の31日には9時15分から一般講演が行われた. 講演数は昨年よりやや多い29題で, 若手の方々に座長をお願いした. 昼休み後には総会が開催されたが, その前に, 当部会員の吉川正明氏が本年6月4日に, 谷井昭夫氏が10月11日に逝去されたので, 哀悼の意を込め黙とうを行った. 総会では庶務, 会計報告が承認された.
 引き続いて一般講演と活発な論議が5時頃まで続き, 本年度の部会を成功裡に終了した.  (畑谷達児)

東北部会:
 平成7年度東北部会は10月26, 27日秋田県田沢湖町, 田沢湖高原温泉ハイランドホテル山荘で開催された. 一般講演 (33題) の他に特別講演では, 京都府立大学の堀野修氏を迎え「白葉枯病菌 (Xanthomonas campestris pv. oryzae) に対するイネの防御機構」と題して講演をしていただき大会参加者 (約100名) に深い感銘を与えた. 部会総会では, 会務報告, 学会・各種談話会の開催状況, 学会の近況, 東北部会の状況, 収支決算等の報告がなされた. 特に今回の部会総会では, 今後部会のますますの発展のために, 県, 民間の人の加入の推進を図ることが重要であると提案され, その対策案の作成が東北地域評議員に委ねられた. その後, 次期部会長に羽柴が選出され, 新部会幹事, 平成8年度開催地としては岩手県 (岩手大学) を, また開催地幹事長に吉川信幸氏を選出して本年度の部会を終了した.  (羽柴輝良)

関東部会:
 関東部会は, 平成7年10月6日, 昨年に引き続き宇都宮大学大学会館ホールで開催された. 9時30分から18時にわたり, 48題の講演発表があり, 約220名の参加者のもとで熟心な質疑応答が行われた. 昼休みに開かれた役員会で部会の運営について協議され, 次期 (平成8〜9年度) 部会長に日本大学農獣医学部篠原正行教授が推された. これについては午後の総会で満場一致で承認された. 講演終了後, 会館内のレストランで, 60余名の参加者を得て懇親会が開かれた. 最初に宇都宮大学若井田正義名誉教授 (永年会員) による, 栃木県の農産物を巧みにおり込んだユーモアあふれる歓迎の辞があり, 会は一気になごやかな雰囲気に包まれた. 篠原次期部会長の音頭で乾杯後, 遅くまで歓談が続いた. 年長会員と若手研究者, あるいは学生との交流も随所にみられ, 意義のある一夕となった. 少ないスタッフ (奥田, 夏秋) で大過なく運営を終えることができたことはひとえに会員各位のご協力の賜であり, ここに改めて感謝するとともに, 次期部会運営についても変わらぬご支援をお願いしたい. なお, 評議員選挙区は南北関東地区に2分割されたが, 講演会としての関東部会は従来通り行われるのでご承知おきいただきたい.  (奥田誠一)

関西部会:
 平成7年度関西部会 (第48回) は, 10月20日 (午後1時) 〜21日大阪府立大学総合情報センターと学術交流会館で開催された. 参加者総数は314名で, 102題の講演発表が3会場で行われた. 演題が多く発表時間が短縮されたが, 熱心な発表と活発な討論が行われ, 予定時間をオーバーすることがしばしばであった. 開催当初の総会の後, 部会長講演として井上成信氏が「植物ウイルスの分類の現状」と題して話され, また一般講演に先立ち, 特別講演として神戸大学農学部教授大川秀郎氏が「生物制御にかかわるP450モノオキシゲナーゼの遺伝子工学」, 関西総合環境センター・生物環境研究所所長小川真氏が「きのこと樹木・寄生から共生へ」の各演題で講演され, 非常に興味深く拝聴した. 部会初日の夕べには学術交流会館において185名が出席して盛大な懇親会が催され, 和やかに学会員の交流が深められた.
 役員会は10月20日の10時から同学術交流会館で開催され, 庶務・会計報告が承認された後, 部会会則に基づく選挙の結果, 平成8年度部会長に一谷多喜郎氏が当選したことについて報告があり了承された. 平成8年度の開催地として山口大学を, 開催委員長に亀谷満朗氏が選出され, さらに部会事務幹事に尾崎武司氏が, 開催地幹事に田中秀平氏が推薦された. これらの案件は午後の総会において報告され承認された.  (井上成信)

九州部会:
 平成7年度九州部会は, 九州農業研究会との共催で, 9月21日(木), 宮崎市の宮崎県立図書館で行われた. 講演題数は24題であった. 病原別にみると糸状菌10, 細菌4, ウイルス・ウイロイド9, 線虫1課題で終日熱心な発表と討論が行われた. 隣接会場で, 日本応用動物昆虫学会九州支部の講演会が開催された. 両講演会の終了後, 会場近くのガーデンベルズ宮崎において, 両部会合同の懇親会が盛大に行われた. この合同懇親会は昭和61年にスタートし, 親睦を深める意味で好評である. 翌日, 22日(金)には恒例となっている九州部会シンポジウムが開催された. 今年は20回目にあたり, 佐賀大学名誉教授, 九州病害虫防除推進協議会会長野中福次氏に「九州における植物病害研究五十年を省みて」という演題で講演をいただき, 他に九州大学農学部古屋成人氏により「非病原性イネもみ枯細菌病菌を用いた土壌伝染性細菌病の生物的防除」, 福岡県農業総合試験場果樹苗木分場草野成夫氏により「カンキツウイルスの検出法と樹体内動静:SDVおよびCTLVについて」の演題で発表され, 正午盛会裡に終了した.  なお, 初日の午後, 佐賀市で開催されることになった, 平成8年度全国大会運営委員会が佐古大会委員長の司会で行われ, 大会準備スケジュール等の確認が行われた.  (荒井啓)

2.談話会開催報告
植物感染生理談話会:
 日本植物病理学会第31回植物感染生理談話会は, 平成7年7月21日〜23日の日程で, 157名の参加者を迎えて, 静岡県浜名郡の地方職員共済施設「浜名荘」において開催された.
 本年のテーマは, 「植物感染機構の進化を考える」ということで, まず, 斉藤成也氏 (国立遺伝研) と佐藤洋一郎氏 (静大農) に分子進化学の基礎と分子進化学的解析の実際についてそれぞれ特別講演していただいた. 次に, 1)植物病原体の系統進化の具体的解析について, ファイトプラズマ, ウイルス, 細菌の事例を難波, 岩波, 瀧川の各氏に; 2)植物病原体の進化に及ぼす環境の影響について, 宿主植物との共進化, 植物病原体における遺伝子の再配列, 環境適応, 細菌間の遺伝子伝達等の各具体的解析例をあげながら, 秋光, 土佐, 百町, 松本(直), 佐藤(守)の各氏に; 3)植物感染の場における植物側の分子進化について, 植物病害低抗性反応における活性酸素の役割, 植物防御反応遺伝子の制御, 葉緑体の役割の各分野で, 道家, 山田(哲), 白野(由)の各氏に; それぞれ大変興味深いご研究をご紹介いただき, 活発な討議が行われた. 特に学生をはじめとした若い研究者の参加が多数あり, ウイルス, 細菌, 糸状菌, さらには植物といった個々の研究ジャンルを超えて, 分子進化を視野にいれた植物感染の総合的研究に向かう機運を感じることができた. 次年度は, 山形大農を中心に計画されることが承認された.  (露無慎二)

植物細菌病談話会:
 日本植物病理学会第18回植物細菌病談話会は, 北は青森県から南は沖縄県まで110余名の参加者を迎え, 11月1〜2日に京都市の京大会館で開催された. 本談話会は昭和40年に第1回が東京・西ケ原の旧農業技術研究所で初めて開催されて以来, 今回がちょうど30年という節目にあたる. この間, 本談話会が京都で開かれたことはなく, 今回初めて京都府大・植物病学研究室のスタッフが本談話会のお世話をした. 今回は「植物細菌病の発生生態, 防除および分子生物学」という幅広いテーマを設定したためか, 国, 府県の試験研究所, 民間企業および大学の細菌病研究者がほぼ同じ比率で参加された. 第1日目の特別講演では, 北村進一氏 (京都府大・農芸化学科) が「Xanthomonas属細菌が生産するザンサンの構造・物性・機能」について総論的に, わかりやすく話された. 次に, 芹澤拙夫氏 (静岡柑橘試) による「キウイフルーツかいよう病の発生生態」, 曳地康史氏 (岩手生工研セ) による「イネもみ枯細菌病の発生生態と防除」, 小林紀彦氏 (国際農研) による「トマト・ナス青枯病の生物防除と総合防除」, 竹内妙子氏 (千葉農試) による「養液栽培によるトマト青枯病の発生生態と防除」など多方面にわたる貴重な話題の提供がなされた. 第2日目は加来久敏氏 (生物研) らによる「Pseudomonas solanacearumに対するタバコ葉維管束組織の抵抗性機構」, 露無慎二氏ら (静大農)による「カンキツかいよう病菌の病原性関連遺伝子の解析」, 津下誠治氏 (京都府大農) による「イネ白葉枯病菌の非病原性遺伝子について」が話された. 各氏とも最近の実験結果を示しての話題提供であったので, 非常に興味深く拝聴した. 今回は討論時間を15分に設定したため, 活発な質疑応答が行われ, かつ討議が十分になされたことは大変有意義であったと思われる. なお, 平成9年度, 第19回植物細菌病談話会はつくば市の農業生物資源研究所 (代表者 加来久敏氏, 土屋健一氏) で開かれることが決まった. また, 第18回植物細菌病談話会講演要旨集の残部が若干あるので, ご希望の方はご連絡をいただきたい.  (堀野修)

学会関連各委員からの報告
日本農学会報告
 平成7年度第2回運営委員会が平成7年5月22日東京大学農学部で行われ, 以下のことが決定した.
(1) 平成8年度シンポジウムのテーマは「新しい遺伝資源の創造」とし, 対応学会は育種学会, 林学会, 畜産学会, 家禽学会, 獣医学会, 農芸化学会の6学会とすることに決定.
(2) 学協会著作権協議会の専門委員会委員を小林(家政), 木庭(育種)が, 分配委員会委員を野間(園芸)が, 電子複写委員会委員を小野(獣医)がそれぞれ担当し, これら3委員会を統括する委員を白石英彦氏とすることを承認.
(3) 農学会にFAX設置(03-5800-3851)を承認. 農学会との連絡にはFAXを利用して下さいとの由.


今後の学会活動および関連学会開催予定

国際植物病理学会および植物病理学会関連国際会議の報告と案内

会員の動静

各種出版物案内
(1) 学会出版物
日本植物病理学会編: 植物病理学事典, 養賢堂, pp.1220, 1995, \28, 840
(2) 会員の出版物
村上浩紀, 緒方靖哉, 松山宣明, 河原畑勇, 矢野友紀編著: 生物生産と生体防御, コロナ社, pp.349, 1995, \4, 532


留学印象記
 昨年の春から1年4ヵ月間, アメリカNew Jersey州にあるRutgers大学, Waksman研究所のKlessig博士の研究室に留学する機会を与えられた. Klessig博士はこれまでアデノウイルスの遺伝子発現について多くの業績を挙げてこられたが, 現在では主に病害抵抗性発現におけるサリチル酸を介したシグナル伝達機構について研究を進めている. 研究所のAssociateDirgctorを務められる傍ら, 10数名のポスドクを抱える大研究室のボスとして多忙な毎日を過ごされている. 研究室は一般的な日本の大学の研究室に比べると広く, 機器類は効率的に配置され複数のポスドクが同時に同じ実験を行っても十分なほどの台数がある. 一方, 蛍光シーケンサーなどの最先端機械は日本ほど充実しておらず, 今や研究設備の点で日本は先進国であることを実感した. 大勢のポスドクが毎日顔をつき合わせて仕事をしているわけであるが, 毎週金曜日に開かれるビールパーティー (Happy Hour と呼んでいる)のせいもあってかコミュニケーションは良好である. しかし, 皆, 質の高い仕事をして職を得ようとしている点ではライバルでもあることが研究室の活性を高める一つの要因になっているのかもしれない. 厳しい状況の中で研究を続ける彼らの姿に, アメリカで生き抜いていくたくましさを感じるとともに, そのような研究環境が独創的な研究を生み出していく素地を作っているのかもしれないと感じた. 私にとって留学で得られた体験は, 予想をはるかに上回るものであった. また, 植物と病原体相互作用の分子レベルでの研究が盛んな時期に海外を見ることができたことは幸運であったと思う. 留学を通じて得た様々なことを今後の研究生活に役立てていきたいと強く感じている. 末筆になりましたが, 留学の機会を与えて下さいました東京農工大学細川大二郎先生, 寺岡徹先生, また有益な助言をいただいた東北大学江原淑夫先生, 羽柴輝良先生にこの場をかりて厚くお礼申し上げます.  (東京農工大学農学部 高橋英樹)

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編集後記